
G2E Asia 2026とは? 統合型カジノリゾート産業(IR)の最前線
2030年、大阪ベイエリアの夢洲(ゆめしま)では、日本初となる統合型カジノリゾート(IR)の開業が予定されています。その夢洲に近接する唯一のDMOである大阪ベイエリアMICEは、この新たな産業との連携を模索し2019年から先行するアジア各国のIR施設の情報収集、関係するビジネスリーダーとのネットワーク構築など着々と準備を進めています。
その文脈において、今年の「G2E Asia 2026」の視察は外すことのできない国際展示会でした。G2Eには、まだ日本には存在していない統合型カジノリゾート産業を支える製造メーカー、ホスピタリティ企業、デジタル技術、周辺サービス事業者などが集まり、未来の大阪IRを構成する企業群を直接確認できる場であるからです。大阪ベイエリアMICEは、こうしたIR産業を支える企業と直接対話し、その最新情報や動向を地域へ還元していくことも、現段階における重要な役割の一つであると考えています。本記事では、G2E Asia 2026視察のリポートを通じて、大阪ベイエリアの将来像について考察します。
G2E Asia 2026とは?
G2E(ジーツーイー/Global Gaming Expo)は、世界最大級のゲーミング・カジノ・統合型リゾート(IR)産業向け国際展示会・カンファレンスであり、アメリカの業界団体 American Gaming Association(AGA)と、展示会運営会社 RX(旧Reed Exhibitions)によって運営されています。
そのアジア版であるG2E Asia 2026は、2026年5月12日(火)から5月14日(木)まで、マカオのベネチアン・マカオで開催。会場では、スロットメーカー、ホスピタリティ、カジノ関連サービス、周辺商材などの展示や商談会が行われ、並行して毎日多数のセミナーやカンファレンスが実施されます。カジノリゾート産業における最新動向が紹介され、アジア各国から多くのIR・MICE関係者が集まります。

展示会は3日間開催なのですが私は業務都合により2日目から現地視察へ参加。会場であるベネチアン・マカオへ到着した時点では開場前にもかかわらず、多くの来場者が開始を待っています。
2026年春は、中東情勢の緊張がアジア航空市場にも広がった影響か、マカオ航空は関空線を含む国際線の減便を実施していました。余談ですがマカオ航空は近年、継続的な赤字経営が報じられていて、燃料価格上昇局面では採算性を重視した運航調整があったようです。
参照元: マカオ航空の国際線減便に関する報道

というわけで私はマカオまでの直行便をあきらめ、関空から香港国際空港へ移動し、その後、香港へ入境せず直接マカオへアクセス可能な港珠澳大橋(こうじゅおうおおはし/Hong Kong–Zhuhai–Macao Bridge)経由のクロスボーダーシャトルバス「HZMB Shuttle Bus」を利用。マカオ到着まで、移動だけで1日を要するというかなり疲れる出張となってしまいました。
参加登録料

G2E ASIAの参加は、展示会だけの参加は無料でカンファレンス参加は有料となります。
G2E Asia 2026 カンファレンス参加料金
| パス種別 | 事前登録料金 (2026年5月11日まで) |
当日登録料金 (2026年5月12日〜14日) |
|---|---|---|
| 3日間パス | US$836 | US$880 |
| 2日間パス | US$599 | US$630 |
| 1日パス | US$428 | US$450 |
参照元: G2E Asia Official Conference Information
G2E Asia 2026 カンファレンス内容一覧
横にスクロールして、各日程のカンファレンス内容を確認できます。
2026年5月12日(火)
アジアのゲーミング市場とIR成長戦略
・アジアのゲーミング市場展望
・アジアIRブームの金融・投資見通し
・次世代ライセンス制度と運営モデル
・統合型リゾートと旅行産業の発展動向
・新興市場への注目
初日は、アジアにおけるIR・カジノ市場の成長性、投資環境、規制、ライセンス制度、観光産業との関係性が中心テーマでした。大阪IRを考えるうえでも、市場形成期に必要な制度設計や事業モデルを理解する重要な内容です。
2026年5月13日(水)
ゲーミング技術・AI・ホスピタリティの革新
・テクノロジーが変えるゲーミングの未来
・カジノフロア構成の最適化
・ゲーミングにおけるAI活用
・AIガバナンスと業界倫理
・責任あるゲーミングの新潮流
・AIとブロックチェーンの連携
・ビッグデータと心理分析によるリスク把握
・AIが変えるホスピタリティ
・没入型エンターテインメントの新しい形
2日目は、AI、データ分析、カジノフロア設計、責任あるゲーミング、ホテルDXなど、IR運営の高度化に関する内容が中心でした。単なるゲーム機展示ではなく、顧客体験・安全性・運営効率を支える技術領域の広がりが見える日程です。
2026年5月14日(木)
規制・コンプライアンス・スポーツエンターテインメント
・世界の経験に基づくUAEのゲーミング規制構築
・ギャンブル領域におけるAI活用
・アジアにおける責任あるギャンブル施策の進化
・金融犯罪防止とコンプライアンス
・アジアのランドベースカジノ市場の戦略的展望
・マカオが描くスポーツエンターテインメントの未来
・スポーツが観光を動かす可能性
・スポーツテクノロジー
最終日は、規制、コンプライアンス、金融犯罪対策、責任あるゲーミングなど、IR運営に不可欠な制度面が中心でした。加えて、スポーツと観光、エンターテインメントを結びつける新しいIRの方向性も示されました。
参照元: G2E Asia 2026 Conference 公式情報
展示会の様子
G2E Asia 2026の会場では、日本では知られていないが世界のカジノ産業では圧倒的な存在感を持つ企業が数多く出展していました。
ここでは、G2E Asia 2026に出展していた主要企業をいくつか紹介します。
■ Aristocrat Gaming(アリストクラット・ゲーミング)

オーストラリアを代表するゲーミングメーカー。世界中のカジノ・IR施設向けにスロットマシンやゲーミングマシンを提供するだけでなく、カジノ管理システム(Casino Management System)を提供しています。
G2E Asia 2026では、大型スロットマシンや最新ゲームを展示しており、特に「5 Dragons」シリーズなど、中国文化圏を意識した演出が印象的でした。
■Light & Wonder(ライト・アンド・ワンダー)

本社はアメリカ・ネバダ州ラスベガスですが、特にアジア市場への注力度が高く、マカオ・シンガポール・フィリピン市場で存在感を強めています。同社も同様に、スロットマシン、電子ルーレット、ジャックポット演出、会員管理、キャッシュレス、データ分析まで含めたカジノ運営統合サービスを提供しています。
■IGT(アイジーティー:インターナショナル・ゲーム・テクノロジー)

IGTは世界100か国以上に拠点をもち従業員も10,000人を超える世界最大級のゲーミンググローバル企業。スロットマシンやシステムでも有名ですが、ビジネスの最大の柱は「宝くじ(Lottery)システム」の分野。世界中の約90に及ぶ政府系・民間の公式宝くじ運営団体と長期的なパートナーシップを締結しています。つまり同社の本質は世界中の政府から国家財源の管理を委託されている『超巨大な社会インフラテック企業』であるということ。日本でいうと国家インフラを陰で支えるNECやHITACHIの『宝くじ・ゲーミング版』のような立ち位置ですね。ロトや電子宝くじにおいて、同社のシステムがなければ世界の宝くじ経済がストップしてしまうほどのシェアを握っています。
参照元: 約90の宝くじ顧客と世界展開
参照元: 世界の主要宝くじへの技術提供
■TransAct(トランスアクト)

G2E Asiaの本当に面白いところは、カジノ運営を支える「カジノ機器サプライヤー」が多く出展している点にあります。
一見、「この機器がカジノ産業とどう関係しているのだろう?」と思うような製品が非常に重要な役割を担っています。安定した運営品質やセキュリティを根底から支えているのは、こうした周辺の見えないインフラ専門技術です。その代表例は、米国企業のTransAct Technologies(トランスアクト・テクノロジーズ)です。彼らはカジノ運営に欠かせない「TITO(ティートー)」の仕組みを支える、高性能な印刷機器を提供しています。

重要なのは、TITOチケット = 実質的なお金だという点です。つまり、バーコード不良、印字かすれ、紙詰まり、重複発行、読み取りエラーは単なる機械トラブルではなく、「監査問題」「不正疑義」「会計差異」につながる重大なオペレーションリスクになります。だからこそ、厳格な認証機関の基準をクリアした製品だけが採用されており、カジノ業界ではTransActはその代表的な企業の1社として知られています。
■JCM Global(ジェイシーエム)

一見すると海外企業のようですが、実は本社は大阪にある「日本金銭機械(Japan Cash Machine)」という会社です。JCMは元々、自動販売機、紙幣処理、現金認識の技術を持っていました。日本は、偽札識別精度、紙幣搬送、高耐久機器、現金管理の要求レベルが非常に高い国です。その技術が、アミューズメント関連機器と相性が良かった。つまり、「日本の高精度現金処理技術」が、世界カジノ市場へ展開された形です。


JCMグローバルは、2025年時点でアクティブなゲーミングライセンス数が178に達したとの報道もあります。つまりネバダ州、ニュージャージー州、シンガポール、マカオ、フィリピン、オーストラリア、etc、その他世界各地の規制当局から信頼を得ている企業ということです。日本のカジノリゾートでも、JCMの製品が採用されることになれば、実は大阪の企業が大阪IRの裏側を支える、という非常に興味深いストーリーになります。
■Mega Fortris(メガ・フォートリス)

セキュリティシール、封印管理システムを提供するMega FortrisがなぜG2Eに出展しているのか?一言でいうと「改ざんを防ぐためのインフラ企業」だから。例えばカジノで人気のゲームにバカラがありますが「使用前の新品カード」「使用中のカード」「使用済みカード」を厳密に管理します。なぜなら、カードのすり替え、マーキング、偽カード混入が発生すると、カジノ側が巨額の損失を被る可能性があるためです。

Mega Fortrisが提供するシンプルなプラスチッククリップが、「物理的な開封防止」と「デジタルによる個体識別」を組み合わせることでプレイカードの健全性を担保する仕組みとなっています。

Mega Fortrisはマレーシア発のグローバル企業でマレーシア本社のほか、海外11か国に営業・運営拠点を展開しており、物流、銀行、航空だけでなく、石油・ガス、医療・製薬など、高度なセキュリティ(開封防止)が求められる分野を網羅しています。特に「プレイングカード(トランプ)の管理」に特化したソリューションは、同社の成長戦略の大きな柱となっています。ちなみに日本代理店はMTセキュリティジャパンです。
マカオ型MICEモデル

G2E Asia 2026は、Sands China Ltd.(サンズ・チャイナ)が運営するベネチアン・マカオ内の大型展示施設「Cotai(コタイ) Expo」で開催されました。
Cotai Expoは、ベネチアン・マカオ単体の展示会場であると同時に、Sands グループがマカオで展開する「Sands Resorts Macao」という巨大IR群の中核MICE施設でもあります。
Sands Resorts Macaoは、ベネチアン・マカオだけを指す名称ではありません。ベネチアン、ロンドナー、パリジャン、フォーシーズンズなど、複数のホテル・展示場・ボールルーム・会議室・商業施設・エンターテインメント施設を一体的に運営する巨大なIRコンプレックスです。
参照元: Sands Resorts Macao Meetings
参照元: Sands Resorts Macao Brochures and Floor Plans
参照元: Sands Resorts Macao Hotels
日本の感覚ではホテル・宴会場、展示場、商業施設、アリーナはそれぞれ別施設として捉え、運営会社も別で構成されているケースが通常です。しかしマカオでは、それらが一つのリゾートエリアとして接続され、MICE主催者に対しても「Sands Resorts Macao」全体として提案されています。

そのため、G2E Asia 2026の会場であるCotai Expoを理解するには、単なる展示ホールとしてではなく、ホテル、カジノ、レストラン、ショッピングモール、ボールルーム、会議室群と連動する巨大なMICE都市機能の一部として捉える必要があります。
大阪ベイエリアMICEへの示唆
マカオ型MICEモデルから学ぶ最大のポイントは、単に巨大で煌びやかな会場を持っていることではありません。重要なのは、展示会場、会議室、ボールルーム、ホテル、レストラン、商業施設、エンターテインメントが一体となり、主催者、来場者に対して「会場単体」ではなく「開催体験全体」を提案している点です。
同様に大阪ベイエリアMICEの存在価値についても、単に会場やホテル、飲食店を紹介することではありません。インテックス大阪、ATC、グランドプリンスホテル大阪ベイ、ホテルフクラシア大阪ベイ、クインテッサホテル大阪ベイの各施設や機能、人をつなぎ合わせ、主催者にとって運営しやすく、来場者にとっては快適で魅力的な開催体験として提案することにあります。

大型国際会議や展示会の成功は、会場単体の規模と機能だけでは不十分で、宿泊、移動、飲食、コネクティビティ、観光資産、それらをつなぐ「人」の存在含めた総合的な体験設計がますます重要になってきています。大阪ベイエリアMICEは、エリア全体をひとつのMICEデスティネーションとして編集し、その価値を国内外の主催者へ届ける役割を担っているのです。
大阪ベイMICEパートナー

マカオで見たように世界の主要MICE都市では、巨大な展示会場、数千室規模のホテル、アリーナ、商業施設、エンターテインメント施設が一体化した大規模コンプレックスが形成されています。マカオのSands Resorts Macaoもその代表例であり、施設規模や一体運営の面で圧倒的な存在感を示していました。
一方で、大阪ベイエリアMICEが目指すべき方向性は、単に施設規模だけを競うことではありません。エリア内の複合的な機能を結びつけ、主催者にとって使いやすく、来場者にとって価値ある開催体験として編集していくことにこそ、大阪ベイエリアMICEの成長戦略があります。
その実現には、咲洲のMICEフィールドを支える「人」と「運営力」が不可欠です。ここで重要な役割を担うのが、旅行業免許を有し、法人・団体向けの大型案件における宿泊手配や移動コーディネートに強みを持つフィールドアシスト株式会社です。
現在は、MICE開催に欠かせないロジスティクス面を支えるパートナーですが、今後はそれに加えて、国内外の企業や団体と大阪ベイエリアをつなぐ視察プログラム、ビジネス交流、インセンティブ旅行、地域体験の企画など、より広い役割が期待されます。
まとめ

G2E Asiaは「カジノの展示会」であると同時に、統合型カジノリゾートを起点とした国際ビジネス交流のプラットフォームでもあります。大阪IRの開業を控える大阪ベイエリアにとって重要なのは、カジノそのものをどう見るかだけではなく、その周辺にどのような産業、人材、技術、ネットワークが集まるのかを理解することです。
2030年の大阪IR開業以降、大阪ベイエリアには国内外から多くの企業や人材が集まり、新たなオフィスやビジネス拠点の進出も期待されます。訪れる人だけでなく、働く人、暮らす人、投資する人が増えることで、このエリアはこれまで以上に国際的なビジネス拠点へと発展していく可能性があります。
集まった人や企業が出会い、新たな交流やビジネス機会が生まれ、その成果が地域の成長につなげるため、その接点を生み続けるため、引き続き大阪ベイエリアMICEは活動を続けていきます。
作成者:井上 雄二(Yuji Inoue)
グランドプリンスホテル大阪ベイ
インターナショナルセールス
E-mail: yuji.inoue@seibugroup.jp
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